(預金取扱い金融機関のルール)
第3の(2)に該当する可能性あり
(全般的な注意)
以下の事例は、金融機関等が「犯罪による収益の移転防止に関する法律」第8条第1項に規定する疑わしい取引の届出義務を履行するに当たり、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として特に注意を払うべき取引の類型を例示したものであり、個別具体的な取引が疑わしい取引に該当するか否かについては、金融機関等において、顧客の属性、取引時の状況その他保有している当該取引に係る具体的な情報を最新の内容に保ちながら総合的に勘案して判断する必要がある。
したがって、これらの事例は、金融機関等が日常の取引の過程で疑わしい取引を発見又は抽出する際の参考となるものであるが、これらの事例に形式的に合致するものがすべて疑わしい取引に該当するものではない一方、これに該当しない取引であっても、金融機関等が疑わしい取引に該当すると判断したものは届出の対象となることに注意を要する。
第1 現金の使用形態に着目した事例
  • (1) 多額の現金(外貨を含む。以下同じ。)又は小切手により、入出金(有価証券の売買、送金及び両替を含む。以下同じ。)を行う取引。特に、顧客の収入、資産等に見合わない高額な取引、送金や自己宛小切手によるのが相当と認められる場合にもかかわらず敢えて現金による入出金を行う取引。
  • (2) 短期間のうちに頻繁に行われる取引で、現金又は小切手による入出金の総額が多額である場合。敷居値を若干下回る取引が認められる場合も同様とする。
  • (3) 多量の少額通貨(外貨を含む。)により入金又は両替を行う取引。
  • (4) 夜間金庫への多額の現金の預入れ又は急激な利用額の増加に係る取引。
第2 真の口座保有者を隠匿している可能性に着目した事例
  • (1) 架空名義口座又は借名口座であるとの疑いが生じた口座を使用した入出金。
  • (2)口座名義人である法人の実体がないとの疑いが生じた口座を使用した入出金。
  • (3)住所と異なる連絡先にキャッシュカード等の送付を希望する顧客又は通知を不要とする顧客に係る口座を使用した入出金。
  • (4)多数の口座を保有していることが判明した顧客に係る口座を使用した入出金。屋号付名義等を利用して異なる名義で多数の口座を保有している顧客の場合を含む。
  • (5)当該支店で取引をすることについて明らかな理由がない顧客に係る口座を使用した入出金。
  • (6)名義・住所共に異なる顧客による取引にもかかわらず、同一のIPアドレスからアクセスされている取引。
  • (7) 国内居住の顧客であるにもかかわらず、ログイン時のIPアドレスが国外であることや、ブラウザ言語が外国語であることに合理性が認められない取引。
  • (8)IPアドレスの追跡を困難にした取引。
  • (9)取引時確認で取得した住所と操作している電子計算機のIPアドレス等とが異なる口座開設取引。
  • (10)同一の携帯電話番号が複数の口座・顧客の連絡先として登録されている場合。
第3 口座の利用形態に着目した事例
  • (1) 口座開設後、短期間で多額又は頻繁な入出金が行われ、その後、解約又は取引が休止した口座に係る取引。
  • (2)多額の入出金が頻繁に行われる口座に係る取引。
  • (3)口座から現金で払戻しをし、直後に払い戻した現金を送金する取引(伝票の処理上現金扱いとする場合も含む。)。特に、払い戻した口座の名義と異なる名義を送金依頼人として送金を行う場合。
  • (4)多数の者に頻繁に送金を行う口座に係る取引。特に、送金を行う直前に多額の入金が行われる場合。
  • (5)多数の者から頻繁に送金を受ける口座に係る取引。特に、送金を受けた直後に当該口座から多額の送金又は出金を行う場合。
  • (6)匿名又は架空名義と思われる名義での送金を受ける口座に係る取引。
  • (7)通常は資金の動きがないにもかかわらず、突如多額の入出金が行われる口座に係る取引。
  • (8)経済合理性から見て異常な取引。例えば、預入れ額が多額であるにもかかわらず、合理的な理由もなく、利回りの高い商品を拒む場合。
  • (9)口座開設時に確認した取引を行う目的、職業又は事業の内容等に照らし、不自然な態様・頻度で行われる取引。
  • (10)異なる名義の複数の口座からの入出金が、同一の時間帯又は同一の現金自動支払機を用いて頻繁に行われるなどの第三者による口座の管理等が疑われる取引。
  • (11)口座開設時に確認した事業規模等と照らし、給与振込額等が不自然な取引。
第4 債券等の売買の形態に着目した事例
  • (1) 大量の債券等を持ち込み、現金受渡しを条件とする売却取引。
  • (2) 第三者振出しの小切手又は第三者からの送金により債券等の売買の決済が行われた取引。
  • (3) 現金又は小切手による多額の債券の買付けにおいて、合理的な理由もなく、保護預り制度を利用せず、本券受渡しを求める顧客に係る取引。
第5 保護預り・貸金庫に着目した事例
  • (1) 保護預り及び信託取引の真の取引者を隠匿している可能性に着目した事例については、「第2 真の口座保有者を隠匿している可能性に着目した事例」に準じる。
  • (2) 貸金庫の真の利用者を隠匿している可能性に着目した事例については、「第2 真の口座保有者を隠匿している可能性に着目した事例」に準じる。
  • (3) 頻繁な貸金庫の利用。
第6 外国との取引に着目した事例
  • (1) 他国(本邦内非居住者を含む。以下同じ。)への送金にあたり、虚偽の疑いがある情報又は不明瞭な情報を提供する顧客に係る取引。特に、送金先、送金目的、送金原資等について合理的な理由があると認められない情報を提供する顧客に係る取引。
  • (2)短期間のうちに頻繁に行われる他国への送金で、送金総額が多額にわたる取引。
  • (3)経済合理性のない目的のために他国へ多額の送金を行う取引。
  • (4)経済合理性のない多額の送金を他国から受ける取引。
  • (5)多額の旅行小切手又は送金小切手(外貨建てを含む。)を頻繁に作成又は使用する取引。
  • (6)多額の信用状の発行に係る取引。特に、輸出(生産)国、輸入数量、輸入価格等について合理的な理由があると認められない情報を提供する顧客に係る取引。
  • (7)資金洗浄・テロ資金供与対策に非協力的な国・地域又は不正薬物の仕出国・地域に拠点を置く顧客が行う取引。
  • (8)資金洗浄・テロ資金供与対策に非協力的な国・地域又は不正薬物の仕出国・地域に拠点を置く者(法人を含む。)との間で顧客が行う取引。
  • (9)資金洗浄・テロ資金供与対策に非協力的な国・地域又は不正薬物の仕出国・地域に拠点を置く者(法人を含む。)から紹介された顧客に係る取引。
  • (10)輸出先の国の技術水準に適合しない製品の輸出が疑われる取引。
  • (11)貿易書類や取引電文上の氏名、法人名、住所、最終目的地等情報が矛盾した取引。
  • (12)小規模な会社が、事業内容等に照らし、不自然な技術的専門性の高い製品等を輸出する取引。
  • (13)貿易書類上の商品名等の記載内容が具体的でない取引。
  • (14)人身取引リスクの高い国・地域に対し、親族と思われる者へ繰り返し少額の送金を行っている取引。
第7 融資及びその返済に着目した事例
  • (1) 延滞していた融資の返済を予定外に行う取引。
  • (2) 融資対象先である顧客以外の第三者が保有する資産を担保とする融資の申込み。
第8 その他の事例
  • (1) 公務員や会社員がその収入に見合わない高額な取引を行う場合。
  • (2)複数人で同時に来店し、別々の店頭窓口担当者に多額の現金取引や外国為替取引を依頼する一見の顧客に係る取引。
  • (3)取引時確認が完了する前に行われたにもかかわらず、顧客が非協力的で取引時確認が完了できない取引。例えば、後日提出されることになっていた取引時確認に係る書類が提出されない場合。代理人が非協力的な場合も同様とする。
  • (4)顧客が自己のために活動しているか否かにつき疑いがあるため、実質的支配者その他の真の受益者の確認を求めたにもかかわらず、その説明や資料提出を拒む顧客に係る取引。代理人によって行われる取引であって、本人以外の者が利益を受けている疑いが生じた場合も同様とする。
  • (5)法人である顧客の実質的支配者その他の真の受益者が犯罪収益に関係している可能性がある取引。例えば、実質的支配者である法人の実体がないとの疑いが生じた場合。
  • (6)自行職員又はその関係者によって行われる取引であって、当該取引により利益を受ける者が不明な取引。
  • (7)自行職員が組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第10条(犯罪収益等隠匿)又は第11条(犯罪収益等収受)の罪を犯している疑いがあると認められる取引。
  • (8)偽造通貨、偽造証券、盗難通貨又は盗難証券により入金が行われた取引で、当該取引の相手方が、当該通貨又は証券が偽造され、又は盗まれたものであることを知っている疑いがあると認められる場合。
  • (9)取引の秘密を不自然に強調する顧客及び届出を行わないように依頼、強要、買収等を図った顧客に係る取引。
  • (10)暴力団員、暴力団関係者等に係る取引。
  • (11)職員の知識、経験等から見て、不自然な態様の取引又は不自然な態度、動向等が認められる顧客に係る取引。
  • (12)資金の源泉や最終的な使途について合理的な理由があると認められない非営利団体との取引。
  • (13)口座開設時に確認した非営利団体の活動内容等と合理的な関係が認められない国・地域又は第三者への送金取引。
  • (14)送金先、送金目的等について合理的な理由があると認めらない外国PEPとの取引。
  • (15)財産や取引の原資について合理的な理由があると認められない外国PEPとの取引。
  • (16)腐敗度が高いとされている国・地域の外国PEPとの取引。
  • (17)国連腐敗防止条約やOECD外国公務員贈賄防止条約等の腐敗防止に係る国際条約に署名・批准していない国・地域又は腐敗防止に係る国際条約に基づく活動に非協力的な国・地域に拠点を置く外国PEPとの取引。
  • (18)技能実習生等外国人の取引を含め、代理人が本人の同意を得ずに給与受取目的の口座開設取引を行っている疑いが認められる場合。
  • (19)公的機関など外部から、犯罪収益に関係している可能性があるとして照会や通報があった取引。
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